私は言語聴覚士として10数年働いてきました。
患者さんとの関わりの中でやりがいを感じることもありましたし「ありがとう」と言ってもらえた時は、この仕事をしていて良かったと思うこともありました。
それでも今、私は退職を考えています。
人間関係が特別悪かったわけではありません。患者さんが嫌いになったわけでもありません。
それでも働き続けることが苦しくなった理由があります。
今回は、私がなぜ言語聴覚士を退職しようと思うようになったか正直に書いてみたいと思います。
責任の重さが休日までついてくるようになった
私が最も負担に感じていたのは責任の重さでした。
言語聴覚士の仕事は、患者さんのコミュニケーションや嚥下機能に関わる専門職です。
特に嚥下評価では自分の判断が患者さんの食事内容や生活に大きく影響します。
もちろん専門職である以上、責任があるのは当然です。
新人の頃はその責任を受け入れながら働いていました。
しかし経験を重ねるにつれ、本当にこの判断で良かっただろうかと考えることが増えました。
もし誤った判断をしていたら、誤嚥性肺炎につながってしまったら
そんなことを休日にも考えてしまい、気がつけば仕事から離れている時間も心が休まらなくなっていました。
勉強し続けることが苦痛だった
もう一つの理由は勉強への苦手意識です。
言語聴覚士は資格をとって終わりではありません。
疾患についてや新しい知見、評価方法など学び続けることが求められます。
私は学生時代から言語聴覚士の分野そのものに強い興味を持っていた訳ではありませんでした。
だから勉強をしていても内容が頭に入らず、何度読んでも理解できないことがありました。
それでも専門職として働く以上、勉強しないわけにはいきません。
「勉強しなきゃいけない」そう思えば思うほど気持ちは重くなり次第に仕事そのものが負担になっていきました。
興味がある分野なら学ぶことも楽しいかもしれません。
でも私にとっては勉強が義務になってしまいました。
責任と給料が見合っているとは思えなかった
言語聴覚士として働く中で、徐々に感じるようになったのが「責任と給料のバランス」への違和感でした。
言語聴覚士は国家資格を持つ専門職です。患者さんの評価を行い、訓練内容を考え、食事形態や経口摂取の可否についての判断に関わります。その判断は患者さんの生活や健康状態に大きく影響します。
私はその責任を感じながら仕事をしてきました。しかし経験を積むほどに「これだけの責任を背負っているのにこの給料なのか」と感じることが増えてきました。
もちろんお金だけが全てではありません。やりがいや人の役にたつ喜びもあります
それでも生活していくためには収入も大切です。
努力しても大きく給料が上がるわけでもなく、昇給額も限られています。
今後何年働いたとしても、待遇が大きく改善する未来はなかなか想像できませんでした。
責任は増えていくのに、それに見合うだけの評価を受けている感覚が持てなかったことは退職を考える大きな理由でした。
将来の希望が持てなくなった
私が退職を考えるようになった背景には業界全体への不安もあります。
近年は診療報酬のたびに、医療や介護の現場が厳しくなっていると感じています。
現場にはコスト意識や効率化が求められ人手不足も深刻です。
その一方で患者さんに求められるサービスの質は下げることができません。
現場で働いていると「これ以上何を頑張れば良いのだろう」と感じることがありました。
もちろん私は制度に詳しい専門家でもありません。
それでも、この頃はリハビリ職の待遇が大きく改善していく未来を想像することは難しく感じています。
頑張れば頑張るほど責任は増える
けれど将来への期待は持ちにくい。
そんな状態が続く中で、このまま定年まで働き続ける自分の姿が思い描けなくなっていきました。
以前はなんとなく「60歳まで働くんだろうな」と思っていました。
しかし今はその未来が現実的なものとして想像できなくなっています。
それでも患者さんとの関わりは嫌いではなかった
ここまで読むと私は言語聴覚士そのものが嫌いになったように思われるかもしれません。
でも実際そうではありません。
患者さんと関わる事自体は嫌いではありませんでした。
訓練を通してできることが増えたり、以前より会話がしやすくなったり、食事が楽しめるようになったり。
そんな変化を一緒に喜べる瞬間には大きなやりがいがありました。
患者さんやご家族から感謝の言葉をいただくこともありました。
その度にこの仕事には意味があると感じていました。
だからこそ悩みました。
仕事にやりがいがないわけではない。
患者さんが嫌いなわけでもない。
それでも辞めたいと思ってしまう。
その矛盾に長い間苦しんできました。
最終的に私が出した結論は「仕事が嫌いだから辞める」ではなく「このままでは自分が持たないから辞める」というものでした。
誰かの役にたつことも大切です。
でも自分自身が限界を迎えてしまっては続けることはできません。
退職を考えたのは逃げではなく、自分の人生を守るための選択だったのだと思っています。