言語聴覚士の給料はなぜ上がらない?約10年間、高齢者リハビリに携わった私が、嚥下障害への対応や多職種連携、書類業務などを経験して感じた「責任の重さと待遇のギャップ」を正直に語ります。
「言語聴覚士って、こんなに責任が重い仕事なのに、どうして給料はあまり上がらないんだろう」
私は言語聴覚士として約10年間働いてきて、何度もそう思いました。
もちろん、言語聴覚士はお金だけで選ぶ仕事ではありません。
患者さんができなかったことができるようになったり、食べることを取り戻していったり、言葉を使って人とつながることを支えたり。
そこには、この仕事だからこそ感じられるやりがいがあります。
それでも、やりがいがあることと、待遇に納得できることは別の話です。
私が特に強く感じていたのは、
「背負っている責任」と「もらっている給料」のギャップ
でした。
私は急性期・回復期・生活期などで、高齢者のリハビリに携わってきました。
嚥下障害、失語症、高次脳機能障害、認知症、構音障害などを担当し、評価や訓練だけではなく、家族指導、カンファレンス、カルテ記載、他職種との連携、退院支援なども行ってきました。
特に嚥下障害では、「食べる」という人間にとって当たり前のことが、時に命に関わります。
患者さんの「食べたい」という希望。
ご家族の「できれば口から食べさせてあげたい」という思い。
そして、安全面を考えなければならない現実。
その間で判断しながら仕事をすることに、私は大きな責任を感じていました。
それなのに、経験を積んだからといって、責任に見合うほど給料が上がっていく実感はありませんでした。
この記事では、約10年間STとして働いた私が、「なぜ言語聴覚士の給料が上がらないと感じたのか」を、現場での実体験を中心に書いていきます。
言語聴覚士の給料は本当に低い?厚生労働省の統計では年収443.6万円。一般の正社員平均と比較しながら、約10年間STとして働いた私が感じた「責任・専門性・業務量と待遇のギャップ」を正直に語ります。
「言語聴覚士って、給料が低いよね」
STとして働いていると、一度くらいはそんな話をしたことがあるのではないでしょうか。
私も長い間、そう思っていました。
でも、改めて数字を調べてみると、少し意外なことが分かりました。
厚生労働省の「job tag」によると、言語聴覚士の年収は443.6万円です。これは令和7年賃金構造基本統計調査をもとにした数字です。
一方、dodaが2025年に公表した正社員の平均年収は429万円。
単純に数字だけを比べると、言語聴覚士のほうが約15万円高いことになります。
「あれ?」
と思いました。
じゃあ、言語聴覚士って、一般の会社員より給料が低いわけではないの?
そうなんです。
少なくとも、この2つの数字を単純に比較して「言語聴覚士は一般の正社員より低収入」とは言えません。
それなのに、私は約10年間STとして働いてきて、
「この仕事、こんなに責任が重いのに、どうして給料はこんなに上がらないんだろう」
と何度も感じていました。
今振り返ると、私が不満に感じていたのは、年収の絶対額だけではなかったのだと思います。
責任が増える。
できる仕事が増える。
勉強し続ける必要がある。
患者さんや家族への対応も増える。
書類も増える。
多職種との調整もする。
それなのに、
「経験を積んだ分だけ待遇が良くなっている」
という実感が持てなかった。
この記事では、約10年間STとして働いた私が感じた「責任と待遇のギャップ」について、数字だけでは見えない部分を含めて書いていきます。
言語聴覚士の給料は本当に低い?
まず、ここは一度整理しておきたいと思います。
私は以前、「言語聴覚士は給料が低い」と思っていました。
でも、今回あらためて公的な統計を確認してみると、単純にそうとは言えませんでした。
厚生労働省のjob tagでは、言語聴覚士の年収は443.6万円とされています。
一方、dodaが2025年に公表した正社員の平均年収は429万円です。
数字だけなら、
言語聴覚士:約443.6万円
正社員全体:約429万円
なので、言語聴覚士のほうが約15万円高い。
つまり、
「言語聴覚士だから、一般の会社員より給料が低い」
とは言い切れません。
ここは、この記事を書くうえでも大事なところだと思っています。
STの待遇について不満があるからといって、都合のいい数字だけを出して、
「STはこんなに給料が低い!」
と煽るような記事にはしたくありません。
では、なぜ私は「給料が上がらない」と感じていたのでしょうか。
一般の正社員と比べると、実は「極端に低い」とは言えない
もう少し考えてみます。
dodaの調査では、2025年の正社員の平均年収は429万円。
言語聴覚士の443.6万円は、これより約15万円高い数字です。
ただし、ここで注意したいのが、この2つは同じ方法で集計された数字ではないということです。
厚生労働省のjob tagは賃金構造基本統計調査をもとにした職業別のデータ。
一方、dodaはdodaサービスに登録した約60万人のビジネスパーソンのデータです。
調査対象も方法も違うので、完全に同じ条件で比較できるわけではありません。
だから、
「STのほうが会社員より15万円高い!」
と単純に結論づけるのも違います。
それでも、この数字から分かるのは、
「言語聴覚士の給料は、世間一般と比べて極端に低いとまでは言えない」
ということです。
じゃあ、なぜ現場では「給料が低い」「給料が上がらない」と感じる人がいるのでしょうか。
私は、その理由の一つが、
「仕事の重さと、給料の上がり方が釣り合っているように感じられないから」
なのではないかと思っています。
それでも私が「給料が上がらない」と感じた理由
命に関わる責任が重かった
私がSTとして働いていて、一番重いと感じていたのが嚥下障害への対応でした。
高齢者リハビリでは、食べることに関わる患者さんを担当することがあります。
患者さん本人は、
「食べたい」
と言う。
ご家族も、
「できるなら口から食べさせてあげたい」
と願う。
でも、嚥下機能が低下していれば、安全面も考えなければいけません。
私は患者さんの状態を評価して、食形態を考えたり、姿勢を調整したり、食べ方を工夫したりしていました。
それでも、状態が悪化してしまう患者さんはいました。
そんなとき、
「自分の判断は正しかったんだろうか」
「もっとできることがあったんじゃないか」
と何度も考えました。
患者さんの状態が悪くなると、自分を責めてしまう。
家に帰っても患者さんのことが頭から離れない。
休日も完全に仕事から離れられない。
私にとって、この責任はかなり重いものでした。
もちろん、すべてのSTが同じように感じるわけではありません。
でも私自身は、
「命に関わる可能性のある仕事をしている」
というプレッシャーをずっと感じていました。
それなのに、その責任の重さが給与に反映されているとは感じられなかった。
これが、私の「待遇への違和感」の大きな部分でした。
リハビリ以外の仕事も多かった
STの仕事というと、
「患者さんとリハビリをする」
というイメージがあるかもしれません。
もちろん、それも大切な仕事です。
でも、実際にはそれだけではありません。
- 評価
- リハビリ
- カルテ記載
- 家族指導
- カンファレンス
- 他職種との連携
- 退院支援
など、さまざまな業務がありました。
患者さんとの訓練が終わったら、そのまま仕事が終わるわけではありません。
記録を書かなければいけない。
必要な情報を共有しなければいけない。
家族に説明することもある。
退院後の生活について考えることもある。
こうした仕事は、一つひとつを見ると当たり前に感じるかもしれません。
でも、それが毎日積み重なります。
そして、経験を積むほど、任されることも増えていきます。
私は、
「新人の頃より仕事ができるようになった」
という実感はありました。
でも同時に、
「新人の頃より、背負っているものも増えている」
とも感じていました。
勉強を続けても給料に直結しなかった
STは、資格を取ったら勉強が終わる仕事ではありません。
働き始めてからも、
「もっと勉強しないと」
と思うことがたくさんあります。
特に私の場合、
「患者さんに迷惑をかけたくない」
という気持ちが強かったので、勉強へのプレッシャーもありました。
休日でも仕事のことを考えてしまう。
分からないことがあれば調べる。
もっと知識をつけなければと思う。
でも、そうやって身につけた知識や経験が、そのまま給料になるわけではありません。
ここにも私は、もどかしさを感じていました。
もちろん、勉強することは患者さんのために必要です。
でも、
「専門性を高める努力」と「給与が上がる仕組み」が別になっている
と感じると、頑張り続けることに疲れてしまうことがあります。
経験年数が増えても待遇が大きく変わらなかった
10年働けば、新人の頃とは当然違います。
患者さんの状態を見る視点も変わります。
経験した症例も増えます。
他職種とのやり取りにも慣れてきます。
家族への説明も、少しずつできるようになります。
でも、それだけ経験を積んだからといって、
「10年目になったら、給料が大きく上がった」
とは感じませんでした。
むしろ、
「できることが増えた」
「任されることが増えた」
「責任も増えた」
という感覚のほうが強かった。
ここが、私にとって一番苦しかった部分なのかもしれません。
給料が低いというより、
「経験を積んだことが待遇に反映されている実感が薄い」
のです。
「年収が低い」と「待遇に納得できない」は違う
今回、数字を調べてみて私自身も少し考え方が変わりました。
「STの平均年収は443.6万円」
この数字だけを見ると、
「別に低くないじゃん」
と思う人もいるでしょう。
実際、一般の正社員平均429万円と比べても、単純比較では大きく下回ってはいません。
でも、私はそれでも「給料が上がらない」と感じていました。
なぜなら、
「今もらっている金額」だけではなく、「これからどれだけ上がるのか」も気になっていたからです。
例えば、
新人の頃は給料が低い。
でも経験を積めば大きく昇給する。
役職につけばさらに上がる。
そういう未来が見えていれば、今の給料に多少不満があっても、
「もう少し頑張ろう」
と思えるかもしれません。
でも私には、その先の待遇が大きく改善していく未来を想像できませんでした。
経験を積む。
責任が増える。
仕事も増える。
でも、給料はそこまで大きく変わらない。
そう感じてしまうと、
「この仕事をあと20年、30年続けていく意味はなんだろう」
と考えてしまいます。
だから私が苦しかったのは、
「年収443.6万円という数字が低かったから」
ではありません。
「これだけ経験して、これだけ責任を背負って、この先どこまで待遇が変わるんだろう」
という不安でした。
STの仕事にやりがいがあるからこそ、余計につらかった
私はSTという仕事を否定したいわけではありません。
むしろ、10年間やってきたからこそ、やりがいも知っています。
患者さんと一緒に考える。
少しでもできることを増やしていく。
ご家族の不安を聞く。
多職種と相談しながら、その人にとってどうするのがいいのか考える。
そういう仕事には、確かに価値があります。
だから、
「給料が安いから辞める」
という単純な話ではありませんでした。
私の場合は、
「やりがいはある。でも、この責任と働き方を何十年も続けられるのか」
という問題でした。
これは、仕事が嫌いというのとは少し違います。
好きな部分があっても、続けられない仕事はあります。
やりがいがあっても、自分の生活や心が削られていくなら、働き方を見直してもいい。
私はそう思うようになりました。
給料に納得できないなら、転職市場を見てみてもいい
もし今、
「言語聴覚士って、この先どのくらい給料が上がるんだろう」
「10年働いているのに、思ったほど待遇が良くならない」
「責任ばかり増えている気がする」
と思っているなら、一度求人を見てみてもいいと思います。
転職する必要はありません。
まず、
「自分の経験は、ほかの職場ではどのくらい評価されるんだろう?」
と知るだけです。
病院から施設へ。
施設から訪問へ。
同じSTでも、働く場所によって仕事内容や待遇は変わります。
求人を見るときは、年収だけではなく、
- 基本給
- 昇給
- 賞与
- 年間休日
- 残業
- 業務内容
- 役職手当
- 福利厚生
なども確認したいところです。
今の職場より条件が良いところがあるかもしれない。
逆に、調べてみた結果、
「やっぱり今の職場のほうが条件がいい」
と分かるかもしれません。
それなら、それでいいんです。
大切なのは、
知らないまま我慢し続けないこと。
転職活動を始めなくても、求人を見るだけで自分の選択肢が見えてきます。
まとめ
今回、あらためて統計を調べてみて、私自身も少し意外でした。
厚生労働省のjob tagによる言語聴覚士の年収は443.6万円。
一方、dodaの2025年正社員平均年収は429万円。
数字だけを比べれば、STのほうが約15万円高い。
だから、
「言語聴覚士は一般の会社員より給料が低い」
とは一概には言えません。
でも、それでも私は10年間働いて、
「給料が上がらない」
と感じていました。
その理由は、年収そのものより、
責任・専門性・業務量が増えていくことに対して、待遇が上がっていく実感がなかったから
だと思います。
命に関わることもある。
勉強を続けなければならない。
リハビリ以外の仕事も多い。
経験を積めば任されることも増える。
それなのに、
「この先、これがどこまで待遇に反映されるんだろう」
という未来が見えなかった。
私はそこに疲れてしまいました。
もしあなたも、
「STの給料って、こんなものなのかな」
と思っているなら、一度だけでも外の求人を見てみてください。
辞めなくてもいい。
転職しなくてもいい。
ただ、
「今の自分には、ほかにどんな選択肢があるんだろう」
と知っておく。
それだけでもいいと思います。
仕事を辞めることは、これまでの経験を無駄にすることではありません。
10年間STとして積み重ねてきたものは、どこへ行っても自分の経験として残ります。
続けることも選択肢。
職場を変えることも選択肢。
まったく違う仕事に進むことも選択肢。
「このままでいいのかな」と思ったときは、その選択肢を一度広げてみてもいいのだと思います。
FAQ
Q. 言語聴覚士の平均年収はいくら?
厚生労働省のjob tagでは、令和7年賃金構造基本統計調査をもとにした言語聴覚士の年収は443.6万円です。
ただし、これは全国の統計データなので、年齢、勤務先、経験、雇用形態などによって実際の年収は変わります。
Q. 言語聴覚士は一般の会社員より給料が低い?
一概には言えません。
dodaの2025年調査では正社員の平均年収は429万円で、厚生労働省のjob tagに掲載されている言語聴覚士の年収443.6万円を単純比較すると、STのほうが約15万円高くなっています。
ただし、2つの統計は調査対象や方法が異なるため、単純比較には注意が必要です。
Q. それなら、なぜ言語聴覚士は「給料が低い」と言われるの?
平均年収そのものだけではなく、
「経験年数に対してどれくらい昇給するのか」
「責任が増えたときに待遇も上がるのか」
「業務量に対して給与が見合っていると感じられるか」
などによって、給与への満足度は変わるからです。
私自身は、年収の数字そのものよりも、経験や責任が増えていくことに対して待遇が上がっていく実感を持てなかったことが大きかったです。
Q. 言語聴覚士は10年働けば給料が大きく上がる?
必ずしもそうとは限りません。
昇給制度や職場の給与体系によって違います。
経験を積むことで仕事の幅が広がっても、それが大幅な昇給につながるとは限りません。
Q. 給料に不満があったら転職したほうがいい?
必ずしも転職する必要はありません。
まず求人を見て、
「今の職場と比べてどうなのか」
「自分の経験はどのくらい評価されるのか」
を確認してみるだけでもいいと思います。
転職することと、転職市場を知ることは別です。